算数が得意な子の教え方

(20090428追加)
 「速さ」の問題で条件が複雑な問題は線分図ではなく、「グラフを書いて解く」練習をさせましょう。グラフを書くと、「相似な三角形」を利用して図形として簡単に答えを出せる問題が多いからです。下の問題を利用して具体的に説明します。
 なお、ほとんどの塾では、上位クラスの生徒に対してもグラフを書いて解かせることはしていないようです。今の時点でお子さんの志望校の過去問をご覧になり、速さの入試問題で、問題文にグラフが書かれているかどうか、問題集掲載の解説が子どもにわかるように書かれているかどうかをご確認ください。速さの入試問題でグラフを含まない学校(開成、麻布、武蔵、桐朋、学習院女子など)の受験生にはぜひ、「グラフを書いて解く」練習をさせたいものです。なお、弊社作成の算数・頻出問題対策プリント「速さ・グラフなし(071D、071Z)」はそのための対策プリントです。

【速さの問題】
 A地点、B地点、C地点が一本の道上にあります。この道を太郎君と次郎君がAから、三郎君はBからCに向かって3人同時に出発すると、太郎君は10分後、次郎君は12分後に三郎君に追いつきます。太郎君がAから、次郎君はBからCに向かって2人同時に出発すると太郎君は何分で次郎君に追いつきますか。[予習シリーズ6年上82ページより抜粋]
解き方@ 3人が動いたようすをグラフに表すと右のようになります。ここで、BFとAEが平行だから、△DBFと△DEAが相似形となり、BF:EA=DB:DE=10:(12−10)=5:1 
ここから、□=12×5=60(分)
解き方A[予習シリーズ解説より] 「分速の差」の比(太郎−三郎:次郎−三郎)は、1/10:1/12=6:5 このとき、太郎と次郎の分速の差(太郎-次郎)は6-5=1となります。A地点を出発した人がB地点を出発した人に追いつくのにかかる時間は、2人の分速の差が6(太郎-三郎)のとき10分ですから、分速の差が1(太郎-次郎)のときは10×6=60(分)となります。

 算数の学力が偏差値60位の生徒を65から70位に上げる方法を「濃度算」の問題を使って説明してみましょう。下の問題は偏差値60位の学校でときどき見かける問題で、塾で上位クラスにいる生徒は必ず学習します。
 さて、A君が塾でこの問題を最も一般的な「解き方@」の方法で習ってきたとします。その場合、私はA君がその解き方をしっかり理解していることを確認した上で、「解き方A」の方法を説明します。「解き方@」の理解が不十分であれば、その方法を徹底理解させ、「解き方A」の方法はあえて説明しません。
 B君がこの問題を「解き方A」の方法で習ってきたとします。その際には、「この方法は計算が楽だけど、応用の利かない解き方だよ。」といって、「解き方@」の方法を教え、理解させます。その上で、このタイプの問題がテストなどに出れば、「解き方A」の方法で解いてもよいことを話します。
 次に、この問題を少し変えて、「同じ量の」を「2:3の比で」に置き換えたり、「両方の濃度が等しく」を「濃度の比が3:2に」に置き換えたりした問題(これだけで、問題の難易度はずっと高くなります)を解かせます。このように問題を変えることによって、「解き方A」のようなワンパターンの解き方を覚えておくだけでは、より難しい問題は解けないことを教え、合わせて「解き方B」の方法でなら難しくした問題でも同じ要領で解けることを教えます。
 いかがでしょうか。1つの問題に対して1通りの解法を覚えてしまうだけでも算数で偏差値60位は取れますが、そのような学習をしていたのでは、算数で偏差値65や70は取れません。どんな問題にも対応できるような一般的な解法をマスターさせることが大切で、トップ校を狙う生徒には複数の解法を使いこなせるようにさせたいものです。
 余談ですが、下の問題に対して3通りの解き方を知っていて、生徒によって教え方を変えられる塾講師や家庭教師がどれくらいいるのでしょうか?さらに、下の問題を生徒の理解度に合わせて(もちろん、入試問題の出題傾向を把握した上で)作り変えて教えられる教師となると、・・・数少ないでしょうね。

【濃度算の問題】
 10%の食塩水が400g入っている容器Aと6%の食塩水が600g入っている容器Bがあります。いま、A、Bの容器から同じ量の食塩水を同時に取り出し、AのものをBへ、BのものをAに移してよくかき混ぜたところ、A、Bの両方の濃度が等しくなりました。容器A、Bから取り出した食塩水の量を求めなさい。
解き方@ まず、等しくなったときの濃度を求める。これは、2つの容器の食塩水をすべて混ぜ合わせたときの濃度に等しく、(400×0.1+600×0.06)÷(400+600)×100=7.6(%) 10%の食塩水と6%の食塩水を混ぜ合わせて7.6%の食塩水をつくるには(7.6−6):(10−7.6)=1.6:2.4=2:3の比で混ぜればよい(多くの生徒は、この部分は「面積図」または「てんびん図」を使います)から、容器A、Bから取り出した食塩水の量は400×(3/2+3)=240(g)、または600×(2/2+3)=240(g)
★ 「面積図」や「てんびん図」を使って解く一般的な解法
解き方A 2つの容器の濃度を等しくするには、どちらの容器も10%の食塩水と6%の食塩水を400:600=2:3の比で混ぜればよいから、容器A、Bから取り出した食塩水の量は400×(3/2+3)=240(g)、または600×(2/2+3)=240(g)
★ 最終的な食塩水の濃度を求めずに解く特殊な解法
解き方B 容器Aに含まれる食塩は400×0.1=40(g)、容器Bに含まれる食塩は600×0.06=36(g)だから、合わせて40+36=76(g) 76gの食塩を400:600=2:3に比例配分して76×(2/2+3)=30.4(g)がA、残りがBにあるとき、容器A、Bの濃度は等しくなる。ここで、容器A、Bの食塩水を1gずつ取り替えるとAからBへ1×(0.1−0.06)=0.04(g)の食塩が移動する。したがって、40−30.4=9.6(g)の食塩を移動させるためには9.6÷0.04=240(g)ずつ食塩水を取り替えればよいことがわかる。
★ 食塩の量の移動に注目した特殊な解法