算数が苦手な子の教え方

 トップページでご紹介しているように、私は受験生なら誰でも知っている「応用自在」の共著者の1人で、主に解説部分の執筆を担当しました。この本の中で書いた解説はごく一般的な解法についてのものですが、実際に教える場合には生徒によって、この解法とは異なった解法で教えることがよくあります。特に、「算数が苦手な子」については、一般的な説明で理解できることが少なく、別の説明が必要になってきます。
どのような説明が有効(=解法をしっかり覚え、自力で使いこなせるようになる)かというと、
@ できるだけ具体的にイメージしやすい方法で教える。
A 公式として機械的に覚えさせることはしない。
B できるだけ計算が楽になるような解法で教える。

 AとBについては私はどのような学力レベルの生徒についても実践していることで、@が「算数の苦手な子」にとってとても重要な教え方だと思います。
 具体的に、どんな教え方をしているかということを、時間のあるときに少しずつ書き加えていきますので、参考にしてください。

【速さの応用(歩幅と歩数)】
12 兄が4歩であるく距離を、弟は5歩であるきます。また、兄が4歩であるく間に、弟は3歩あるきます。
(1)兄と弟の歩幅の比を求めなさい。
(2)兄と弟のあるく速さの比を求めなさい。
〈予習シリーズ・6年上、P142 例題8(改)〉 
12(1) 兄が4歩であるく距離を、(4と5の最小公倍数の)20とおくと、兄の歩幅は20÷4=5、弟の歩幅は20÷5=4となるから、兄と弟の歩幅の比は5:4
(2) 兄が4歩あるくと5×4=20進み、弟が3歩あるくと4×3=12進むから、兄と弟のあるく速さの比は20:12=5:3
☆ 下の例題11と同じで、『逆比』の考え方を使わずに、等しい距離を計算しやすい数でおいて図を書きながら具体的に説明した方が理解の定着を図ることができます。
 
【旅人算】
11 ある池のまわりを1周するのに、兄は20分、弟は30分かかります。これについて、次の問いに答えなさい。
(1) この池のまわりを、2人が同じ地点から同時に反対方向に進みます。2人がはじめて出会うのは、出発してから何分後ですか。
(2) この池のまわりを、弟が出発してから10分後に、同じ地点から兄が弟と同じ方向に進みます。兄が弟に追いつくのは、兄が出発してから何分後ですか。
 〈予習シリーズ・6年上、P104 例題1〉
11 池の周りの長さを(20と30の最大公約数の)60mとおくと、兄の分速は60÷20=3(m)、弟の分速は60÷30=2(m)となる。これを使って、
(1) 60÷(3+2)=12(分後)
(2) 2×10÷(3−2)=20(分後)

☆ 下の例題8と同じで、池の周りの長さを計算しやすい数でおいて、2人の速さを求め、それを使って旅人算の方法で答を出すことができます。この方法では、2人の速さの”比”という概念を用いませんから、算数の苦手な生徒にとっても理解しやすいと思います。
 
【解き方の手順について】
10 次の4つの数のうちで、最大の数と最小の数の差を求めなさい。
    0.4  4/9  3/7  0.42
10 4/9=4÷9=0.44…  3/7=3÷7=0.428… だから、最大の数は4/9で、最小の数は0.4 よって、最大の数と最小の数の差は4/9−0.4=20/45−18/45=2/45

☆ 4つの数を全部分数に直してから通分して・・・という順に解く子が多いですが、この問題の場合は上に書いたように4/9と3/7を小数に直して4つの数の大きさを比較してから、最大の数と最小の数だけ計算する方が簡単です。「答は合っているのだが、解くのに時間がかかりすぎる」という子の場合、このように遠回りな解き方をしていることがよくあります。
【面積と比】
 ある正方形のたての長さを□%長くして、横の長さを20%短くした長方形を作りました。正方形と長方形の面積が等しいとき、□にあてはまる数を求めなさい。
 正方形の1辺の長さを10とおくと、面積は10×10=100で、長方形の横の長さが10×0.8=8だから、たての長さは100÷8=12.5 12.5÷10−1=0.25より、□=25(%)

☆ 正方形の1辺の長さと面積を1とおいて計算するのが一般的ですが、1辺の長さを10とおいた方が計算は楽ですね。
【旅人算と比】
 AさんとBさんの2人が同じ地点を同時に出発して池の周りを一定の速さで歩きます。同じ向きに歩くと2人は10分ごとにすれちがい、逆向きに歩くとAさんがBさんを30分ごとに追い越します。AさんとBさんの歩く速さの比を求めなさい。
 池の周りの長さを30mとおくと、AさんとBさんの分速の和が30÷10=3(m)で、差が30÷30=1(m)だから、Aさんの分速は(3+1)÷2=2(m)、Bさんの分速は2−1=1(m) よって、AさんとBさんの歩く速さの比は2:1

☆ このように比を求める問題では、未知数を計算しやすい実際の数(この場合、池の周りの長さを30mとおいたこと)に置きかえて計算してかまいません。
【金額と比】
 貯金箱の中に50円玉と10円玉が合わせて85枚あり、50円玉だけの金額と10円玉だけの金額の比は2:3でした。50円玉は何枚ありましたか。
 50円玉だけの金額を200円、10円玉だけの金額を300円とおくと、コインの枚数の和は200÷50+300÷10=4+30=34(枚)で、実際にはこの85÷34=2.5(倍)の枚数だったから、50円玉の枚数は4×2.5=10(枚)

☆ このように実際の金額に置きかえて計算し、実際と比べるという方法(問4と同じ手法)の方が「算数の苦手な子(比の使い方の苦手な子)」にとってはイメージしやすい解き方だと思います。
【濃度算と比】
 濃度の異なる2種類の食塩水A、Bがあります。AとBを1:2の比で混ぜると11%になり、3:1の比で混ぜると6%になります。食塩水Aの濃度を求めなさい。
 この問題自体は非常にレベルの高い問題で上位校でときどき出題されるものです。一般的にはこの問題は「てんびん図」を使って解きますが、次のように説明すると、算数の苦手な子にもよく理解できると思います。
 A100gとB200gを混ぜると11%になり、その中に含まれる食塩の量は(100+200)×0.11=33(g) また、A600gとB200gをまぜると6%になり、その中に含まれる食塩の量は(600+200)×0.06=48(g) ここで、Bの食塩水の量が等しいから、食塩水A600−100=500(g)中に48−33=15(g)の食塩が含まれていることがわかる。よって、食塩水Aの濃度は15÷500×100=3(%)

☆ これは「消去算」を利用した解法ですが、AとBを1:2で・・・というのを、Aを100g、Bを200g(AとBが1:2であればどのような重さでも可)と読み替えてしまうのがポイントです。そうすれば、比を使わずにすみ、イメージしやすい問題に変わります。
【容積の仕事算】
 ある容器にじゃ口Aから水を入れると20分、じゃ口Bから水を入れると30分で満水になります。じゃ口A、Bを両方使って水を入れると、何分で満水になりますか。
 一般的には、@容積を1とおく方法、Aまず、じゃ口A、Bから1分間に出る水の量の比を求め、次にそれを利用して容積を表して解く方法 がありますが、「算数の苦手な子」にとってはAの逆の方法が理解しやすいようです。
 すなわち、まず、この容器の容積を(20と30の最小公倍数の)60とおくと、じゃ口Aからは毎分60÷20=3、じゃ口Bからは毎分60÷30=2の水が出るから、両方を使って水を入れると、60÷(3+2)=12(分)で満水になるという求め方です。

☆ このように教えると、比(逆比)の説明が不要になります。
【植木算と比】
 池の周りに8mおきにくいを打つ場合と10mおきにくいを打つ場合では、必要なくいの本数の差は5本になります。この池の周りの長さは何mですか。
 この問題の解法を参考書で調べると、@差集め算の利用、A相当算の利用、B比(逆比)の利用のうちのどれかが載っていると思いますが、私は次のような方法で教えます。
 池の周りの長さを(8mと10mの最小公倍数の)40mとすると必要なくいの本数の差は40÷8−40÷10=5−4=1(本)で、実際の本数の差はこの5÷1=5(倍)だから、実際の池の周りの長さは40×5=200(m)


☆ 多くの受験生が苦手とする比を使う問題では、ここに書いたような具体的な数を使って計算して実際と比べる(何倍)方法が「算数の苦手な子」にとってはかなり有効だと思います。5以降の問題で、このような解法をいくつかご紹介します。「算数の苦手な子」でも簡単に理解できると思います。
【計算の工夫(分配法則の利用)】
 314×0.2+31.4×16.1−3.14×□=314
   (2007年 玉川学園中・1回)
 玉川学園中のHPによると、受験生の出来はあまりよくなかったようです。理由は簡単に想像できます。分配法則を利用しなかったか、あるいは使い方を間違えた生徒が多かったからです。このタイプの問題は中堅校で頻繁に出題されますので、正しく計算できるように十分な練習をつんでおくことが必要です。なお、この問題は
3.14×20+3.14×161−3.14×□=3.14×100 と式を変形し、
3.14×(20+161−□)=3.14×100  □=20+161−100=81 と求めます。
【キセル算】
 1/1×2+1/2×3+1/3×4+・・・+1/9×10 を計算しなさい。
2 これは1/1−1/10=9/10 という計算で答えが求まる問題ですが、これを機械的に覚えている子が大半です。この解き方を暗記しているだけでは、 3/1×2+3/2×3+3/3×4+・・・+3/9×10、あるいは、 1/1×3+1/3×5+1/5×7+・・・+1/9×11というように少し式を変えただけで解き方がわからなくなってしまいます。このような問題は公式として覚えさせるのではなく、たとえば、1/1×3と1/1−1/3の大きさの関係が1/1×3=(1/1−1/3)÷2と表せることを確認させながら、式の変形の仕方を教えるべきです。
【割算について】
1(1)
 1000円さつが19枚、100円玉が7枚、10円玉が4枚あります。これらのお金を3人で等しく分けるとき、1人あたりいくらもらえばよいですか。
(2) 19時間58分42秒÷3 を計算しなさい。
1(1)@全部で19740円あるから、19740÷3を計算すればよい(普通の説明)。
Aまず、1000円さつ19枚を3人で分けると1人に6枚ずつで、余り1枚。これを100円玉にとりかえて、100円玉(10+7=)17枚をまた3人で分けると、1人に5枚で、余り2枚。同じようにこれらを10円玉にとりかえて、10円玉(10×2+4=)24枚を3人で分けると、1人に8枚ずつ分けられる。よって、1人あたり、1000円さつ6枚、100円玉5枚、10円玉8枚で、6580円。

(2)
@19時間58分42秒は(19×60×60+58×60+42=)71922秒だから、71922÷3=23974(秒) 23974÷60=399…34、399÷60=6…39 より、23974秒は6時間39分34秒
A19時間÷3=6時間…1時間 (1時間+58分)÷3=118分÷3=39分…1分
(1分+42秒)÷3=102秒÷3=34秒 よって、6時間39分34秒


☆ (2)の問題はAの解法の方がずっと簡単ですが、「算数の苦手な子」の半分くらいは@の解法で解いています。そして、計算が複雑なため途中で計算間違いをして・・・というのがよくあるパターンです。@の方法で覚えてしまっている子に対して、(1)Aのような具体例を示しながら、(2)Aのような計算ができることを教えてあげれば素直に理解できると思います。