1.受験算数の実践的解法例

 「中学受験算数」の一番の魅力はいろいろおもしろい解き方があること、特に、数学の解法よりも簡単に速く解ける解法があることだと思いますが、算数の苦手な子にとっては、それが魅力ではなく、逆に苦痛となるようです。算数の苦手な子は問題の解き方を理解しようとせずに、「覚えようとする」ため、覚えきれずに苦痛を感じるのではないでしょうか。また、解法を覚えた問題と少し条件の変わった問題が出題されただけで、すぐにあきらめてしまうのも、算数の苦手な子によく見られることです。
 このコラムでは、いろいろな問題の一般的な解法(学習参考書などで採用している解法)ではなく、算数の苦手な子にとってわかりやすい解法をいろいろ紹介していきます。思いつくままいろいろ書いていきます。読み物として、気楽にお付き合いください。

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【例題6】 <図1>のように、底面が直角三角形で側面が長方形である三角柱の容器を水平な机の上におき、深さが25cmになるまで水を入れ、水がこぼれないようにふたをしました。この容器を辺BCを机につけたまま、<図3>のように長方形BCFEが机につくまで少しずつ傾けていきました。<図2>はその途中で、水面が三角形APQになったときのようすを表しています。次の問いに答えなさい。ただし、容器の厚みは考えないものとします。
(1) この容器に入れた水の量は何リットルですか。
(2) <図2>のBPの長さを求めなさい。
(3) <図2>の水面の三角形の3辺AQ、AP、PQで一番長い辺はどれですか。
  また、一番短い辺はどれですか。
(4) <図3>で、台形RBCSの面積と、三角形ARSの面積の比を求めなさい。
〔横浜雙葉中の入試問題より〕

 10年以上も前の横浜雙葉中の問題ですが、解説プリントを作るために最近、問題を解き直して見つけました。とてもユニークな問題です。(1)と(2)は普通の問題ですが、(3)がご紹介したい問題です。長さを比べるときに実際に長さを求めて比べるというのが一般的な解法ですが、この問題ではAPとAQの長さは小学生には求まりません(根号を使った長さになります)。それでも、計算をまったくしなくても、「APの長さはPQ(50cm)よりも長く、AQの長さはPQよりも短い」ことがわかりますので、答は出せます。
 (4)は容器内の水の体積と空気の部分の体積比ですから、(図1)を使えば、25:(45-25)=5:4とかんたんに求まります。(図3)を使って、「2つの三角形の相似比と面積の関係から各辺の長さを求めて・・・」と解いていくと、とても時間がかかります。


(参考) (2)でBP=37.5cmと求められれば、あとは△ABCを△ABP、△ACQに重ねてみると、APがBC(50cm)よりも長く、AQがBC(50cm)よりも短いことがわかります。

【例題5】 次の数列の100番目の数を求めなさい。
      1,1,2,1,2,3,1,2,3,4,1,2,3,4,5,1,・・・

 小6受験生が10人いるとき、そのうちの1〜2人は計算で答を出します。最初からあきらめてしまう子も1〜2人いるでしょう。他の大部分の子はすぐに続きを書き出して答を求めます。この種の問題では書き出して求める方法で解いてかまいません。ただし、書き出す方法で解こうとする生徒の多くは100個の数字をそのまま書こうとして余白に書ききれずに、次の問題文に重ねて書いてしまったり、途中で書きまちがえて正解を出せなかったりします。
 このような問題で書き出す場合には、1,1〜2,1〜3,1〜4,…といった書き出し方をすればよいのです。そうすれば、場所もとらず、かぞえまちがいもずっと少なくなります。

【例題4】 次の表で、300は上から何行目、左から何列目にありますか。
10
13
12
11

 このような問題の解法もまったく同じです。数字の続きを300まですべて書き出してしまうというのは、あまりよい方法ではありません(もちろん、簡単にあきらめてしまうよりもずっとよいことですが)。このような問題では1行目あるいは1列目だけ300に近い数まで書き出し、その前後だけていねいに書いて答を出すのが一般的な方法です。
 例題1の問題と同様で、10人のうちの1人くらいは1行目(あるいは1列目)で、300に近い数を計算で求めますが、自信がなければ、そこまでする必要はありません。

【例題3】 お母さんの年令は42才、3人の子どもの年令は1才、4才、6才です。3人の子どもの年令の和の2倍が、お母さんの年令と等しくなるのは、今から何年後ですか。

 これは、年令算の比較的レベルの高い問題ですが、算数の得意な子にとっては線分図や計算で短時間に解ける問題です。一方で、算数の苦手な子にとっては、かなりきつい問題に見えます。しかし、この問題も3年生や4年生の頃ならった表を書いて求める方法を使えば、下のように簡単に答を出せます。線分図や計算で解く方法だけが正しい解き方ではないのです。速く正確に解ける方法であればどんな方法で解いても構わないということを、とくに算数の苦手な子に知っていただきたいと思います。

現在 1年後 2年後 3年後 4年後
お母さんの年令 42 43 44 45 46
子供3人の年令の和 11 14 17 20 23

【例題2】 1から200までの整数のうちで、次のような整数はいくつありますか。
(1) 4でわると1あまる整数
(2) 6でわると2あまる整数
(3) 3でわると2あまり、4でわると1あまる整数

 算数の各問いの文章は他の教科とちがって、ごく短いものですので、生徒にはすべての設問を読んでから、問題に取りかかるように指導しています。その理由は、@ 解法によっては問(1)よりも問(2)の答を先に求めることのできる問題が少なくない。 A そのあとに続く問題によっては、問1の解法を変えたほうがよい場合がある。
 ここではAの場合を説明しましょう。上の【例題4】で、問いが(1)だけの場合、4でわると1あまる整数は1、5、9、・・・、197で、(197-1)÷4+1=50(個)というように計算で答を求めます。ほとんどの子は(1)から順に問題が難しくなっていくと思い込んでいますから、まず、(1)と(2)を上のような計算で解いて、それから(3)に取りかかります。しかし、(3)については条件にあてはまる最小の整数を最初に書きだしてさがすことになりますから、(1)から(3)までの問いをはじめに読んでしまえば、(3)で書き出したものを(1)と(2)で使えることがわかります。具体的には数字をただ書き並べるのではなく、下のような表に表します。
 この表では12ずつ行を変えていますが、12は3、4、6の最小公倍数です。この表は全部で17行(200÷12=16…8、16+1=17)あり、(1)〜(3)で求める数はそれぞれ同じ列に並びます。これを利用すると、(1)は赤の数字の個数で、17×3−1=50(個)、(2)は青の数字の個数で、17×2=34(個)、(3)は5、17、…、185、197で17個とわかります。
 いかがでしょうか。(1)だけ解くのであれば、計算で求めたほうが速いでしょうが、(1)〜(3)までまとめて解く場合には下のような表を利用した方が速く、正確に答を出せるでしょう。 お子さんにも「すべての設問を読んでから、問題にとりかかる」ことを勧めてみませんか。

10 11 12
13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
25 26 27
180
181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192
193 194 195 196 197 198 199 200

【例題1】 次の2つの数の最大公約数を求めなさい。
(1) 65と91
(2) 391と437

 受験学年の生徒であれば、(1)くらいは見てすぐに答を出せるでしょう。一方、4年生や5年生で公約数について学習したばかりの生徒の中に、両方の数を2で割って、3で割って、4で割って、…というように小さい数から順に探している生徒をよく見かけます。これはとても時間のかかるよくない方法です。この場合、65だけに注目すると5で割れることはすぐにわかりますから、実際に割ってみると、65÷5=13 13は素数ですから、65は1と65と5以外では13でしか割れない整数であることがわかります。一方、91は1、5、65では割れない数ですから、残った13で割ってみると、91÷13=7となり、65と91の最大公約数が13とわかります。
 (2)については、どちらも大きな数で、一方のみ見てもすぐに割れる数を見つけるのは大変ですね。このような問題の場合、(437−391=)46の約数の中に答が含まれます。46の約数は1、2、23、46で、これらを大きい順に実際に割ってみると、391と437の最大公約数が23とわかります。このような手順や知識の有無により、問題処理のスピードが大きくちがってきますので、お子さんがこのことを知っているかどうか、確認してみてはいかがでしょうか。